床に膝をついて目線を合わせること
─── 今日はよろしくお願いいたします。早速ですが、入職までの経緯を教えてください。
寺尾:それまでは全くの別業種で設計の仕事に就いていたのですが、その会社が廃業してしまって。そのタイミングで入院した祖母の施設で介護やリハビリ業務を目にして、心機一転やってみようと思ったのがきっかけでした。
─── いいな、と思ったポイントはどこだったんですか?
寺尾:体調を崩した祖母がいい表情で楽しそうに体を動かしているのを見て、それまでの仕事にない魅力を感じたんですね。もともと人に喜んでもらうのが好きだったので、人を支えられる仕事ということで心に響きました。
─── その当時、ながおか医療生協は「働きながらヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)を取得しましょう」という触れ込みで募集をかけてたんですよね。入職していかがでしたか?
寺尾:そうなんです、それで入職して。でも自分が思い描いていた仕事ができるようになるまでは戸惑いもそれなりにありました。対人業務が初めてでしたから。身体介護は勉強すればある程度分かるところもありますが、人との接し方は経験の積み重ねで上達するしかありませんから。
─── その大変さを具体的に教えてください。
寺尾:ご病気や障害を背負って気落ちされているご利用者をどう支えていけるのか・・・ご本人は相当落ち込んでおられるわけで、そこでどういう支援が自分にできるのか。相手の立場、気持ちになって話をお聞きしたり、生活の状況まで一緒になって考えて接していかなければならない、ということの難しさでしょうか。そういった関わり方は身体介護を一通り身に着けるよりも時間がかかりましたね。2年程度でしょうか。
─── 向き不向きが問われる感覚ですね。
寺尾:若い人は積極性があっていいと思う反面、一定の社会経験や常識が求められるところもあるので、ご利用者の話を伺って意向に沿う行動がすぐにできるかというと、難しいと思うこともありますね。
─── これまでの長いキャリアで小規模多機能型居宅介護、デイサービス、グループホーム、特養、通所リハビリなど経験してこられましたが、特に印象に残っている施設はどちらでしたか?
寺尾:小規模多機能型居宅介護のプラット高町ですね。その当時、施設に併設されているわいが家(組合員向けの活動交流空間)で昼休憩を取っていたのですが、そこで班活動や催し物に参加されている組合員さんから声をかけていただくことがよくあって。他愛もない話をしたり、話の輪に入れていただいたり、時にはサービスを利用されている方からはお礼の言葉をいただいたり、また地域で困っている方のお話をお聞きして、地域ぐるみで助け合いのようなことができていたり・・・思い出は尽きません。温かい交流が嬉しかったですね。地域との関係性が深い施設でしたね。そういうことができるのはウチの法人くらいなんじゃないでしょうか。
─── コロナの前までは子供たちも遊びに来てましたよね。
寺尾:そうそう、携帯ゲームで遊んでたり、宿題していたり。ほとんどゲームでしたが(笑)。
─── その後デイサービスを挟んでグループホームに異動になりました。初めての入居施設でしたが。
寺尾:小規模やデイサービスは一日の流れがある程度決まっているので、そこから逸脱した支援はできませんが、グループホームでは「自宅にいていただく感覚」を大切にして、私たちが入居者の方々の家族のような立場になれると安心されていいな、と思って日々仕事に臨んでいました。そのため日常業務はできるだけ段取りよく進めて、できるだけ入居者の方と向き合ってお話を伺う時間を大事にしていました。
─── その後は特養、そして現在の通所リハビリに異動となりました。
寺尾:もう入職から10年を経過していましたが、いずれも初めて尽くしでした。特養は身体的に重度の方が多くいらっしゃるので、移乗や入浴介助は大変でしたし、看取りも初めてさせていただきました。看取りは難しかったですね。また入居者の方は、フロアや居室で思い思いの時間を過ごす方がほとんどなので、何か楽しみを持てる時間があればという気持ちのなかでレクリエーションもどこまで提供したらいいのかという葛藤とか。
通所リハビリは逆に入浴や食事の提供はないので、ご自宅から事業所間の送迎や排泄介助が主に身体的な介助になりますが、リハビリのご利用者は身体機能の維持や向上を目的に来られているので、そういったところの情報提供のために、病気や障害についてもかなり勉強しないといけない。専門用語も最初はなかなか分からないし、聞いて調べての繰り返しでした。また100名を超える方々の方の生活背景なども把握しなければなりませんしね。
─── これまで多くの職員と一緒に働いてこられましたが、印象に残っている上司や先輩のことを教えてください。
寺尾:デイサービスの時にお世話になった施設長のご利用者への姿勢が忘れられません。私の理想ですね。その方は仕事をいつもたくさん抱えていたのですが、ご利用者と接する時はいつも笑顔を絶やさず優しい口調で、常に目線の高さを合わせてご利用者のお話を傾聴していた姿が印象に残っています。そのことを胸に、私もご利用者とお話する際は床に膝をついて目線を合わせるようにしています。
またご利用者を笑わせる、楽しませるのもとても上手い方でした。自分が楽しまないと相手にも伝わらない、楽しくならないということを教わったように思います。私もレクの際には、いつもその気持ちを胸に臨んでいます。
─── ながおか医療生協は未経験の方も多く入職されていますが、これから介護を始める方にアドバイスをいただけますか?
寺尾:私は介助の前に相手との信頼関係が必要だと考えています。そのため、介護を始める方には「ご利用者は人生の先輩なので、関わる時はそれを意識して欲しい」と伝えています。会話であれば姿勢や言葉遣いに気を付けて、目線を合わせて話しかけるとかでしょうか。
─── まず関わり方から身に着けるということですね。
寺尾:はい。信頼していただけると、今まで知らなかったことや若い頃に経験されたことを話してくださることもあり、更に関係性が深まるので、介助にも入りやすくなります。
─── 入職してなかなか現場に馴染まない方は、業務が身に付かないケース、もしくは周囲とのコミュニケーションがうまくいかないケースに大別されるのですが、それぞれについてはいかがでしょうか。
寺尾:業務の習得で言えば、介護の仕事が好きなのかどうかが大きいのかなと私は思います。もう一歩踏み込んで言えば、そもそも人に喜んでもらえることが好きかどうかですかね。好きなら覚えるのも早いと思います。まずご利用者と積極的に関わってみることから初めてみてはどうでしょうか。「あなたがいるからここを利用しているんだよ」なんて感謝の言葉が聞けたら変わるかもしれません。そこに糸口があるような気がします。
コミュニケーションは、自分をよく知ってもらうことが大事なのではないかと思います。自分がどういう人間なのかが分かれば、相手の気持ちもゆるんでコミュニケーションが取りやすくなるのでは。何でもいいんだけど、得意なことや好きなことをアピールしてみてはどうでしょうか。その上で、相手のことを理解すること。ご利用者に対しても同じことで、例えばその方が生きてこられた時代背景を勉強して理解すること。自分をさらけ出してから相手の方も理解する。そのことで打ち解けることができるのかなと思います。
─── ありがとうございました。最後に、これまで続けてこられた理由について教えていただけますか?
寺尾:ながおか医療生協はやっぱり組合員さんの存在が大きくて、これまでたくさん温かい言葉をかけてもらえて励まされてやってきたところがあります。入職してから長いので、どこの施設に行っても、今でもご利用者ご家族の組合員さんにお元気でしたか、その節はお世話になりましたとかと声をかけていただけます。診療所でバッタリお会いすることもあれば、ボランティアで施設に来られることもあったりして、ただ仕事をしている以上のやりがいがありました。
そんなつながりや思い出があるとやっぱり辞められません。温かい職場だなと思っています。
─── 今日はどうもありがとうございました。
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